壮瞥町で、宇井・岡田両教授による、
説明会がありました

その2

(5/6 壮瞥町公民館にて)

2000年 有珠山噴火の活動現状報告

北大 宇井 忠英 岡田  弘

18:40 レクチャー資料の説明
050620.jpg (13370 バイト)050621.jpg (14941 バイト)050622.jpg (14905 バイト)050623.jpg (15534 バイト)050613.jpg (26449 バイト) 宇井
記者レクチャーでも使用した資料をお見せします(OHP使用)

1 断層・火口の位置図

  • 自衛隊の偵察機(F4EJ改 午前中に飛行を確認)で撮った写真や、その他目視観察、観測機器からのデータを元に作成したもの。
  • 西山西方の国道230号線の周囲に大小いくつもの断層がある。
  • 西山だけではなく、壮瞥温泉・有珠山南方にも断層がある。

2 西山周辺地域の隆起状況図

  • 65m隆起の根拠となったもの。建設庁のレーザービーム測量によるもの
     (ただし、隆起+噴出物−火口生成による陥没という形で65mと計算)
  • 西山火口郡のあたりが集中して隆起している
  • 西山(潜在溶岩ドーム)西側西方(古い岩盤層)の間に隆起が集中している。
  • 西山の隆起部分の南側の部分も若干隆起が見られる

岡田
マグマが
「西山を避けた」
「古い山を避けた」
ため、狭いところしか出所が無かった

また、隆起が南方面に膨れている(JRの線路を曲げたのもこれのせい)南側のほうが低いので、マグマが出やすいのかもしれない。
いまだ南側は隆起が継続している。
今はあくまで第一段階が終了したに過ぎないと考えます。この後は

「地上に溶岩ドームができるか?」
「新たに噴火口を作るか?」

マグマの動向を観察することで、分かると思う。

宇井
隆起状況について
初期は1日10m近く上昇した場所もあるが、31日以降は序序に収まり、
現在はほぼ横ばい状態である

岡田
また、地震についてですが、31日までは頻繁に発生していたが、一度収まりかけ、
その後噴火。
震源を算出したところ、西山北西火口郡付近については地震は発生していない。
これは今までの噴火事例とは若干異なる。
噴火地域で地震が起きず噴火したのは今もって理由がわからない。
マグマは当初山頂を目指していたものと思うが、古い溶岩ドームがあるため迷走、西
の弱い場所をねらい、水に接触。噴火したものと思われる

宇井
噴火の形状について

岡田
火山性微動について
3パターンぐらいに分かれている

OHP説明の様子
渡された資料をじっくり見ながら聞く地元の人
17:30 質疑応答
 

Q 今の話であった、出口を求めてさまようという話から、次は壮瞥側で噴火するようなことはないのか?

A 出口を求めてさまようといっても、今回のマグマの出所は、金毘羅山の深いところから上がっているように思える。
それが小有珠の下にぶつかり、それ以上行けないので、別なところ、別なところ、と彷徨ううちに今の場所から噴火したと思う

今度はどこから出るか?マグマが隙間を見つけて出てくる場所としては、今隆起している場所、それ以外で地割れがあるところ、ずれがあるところ。から出てくる可能性が高い。
これは観測である程度分かるかもしれない

伊達やその他まったく違うところからの噴火の確立は今のところ低いと思う。

 

Q 放出したエネルギーが少ないと言っていた記憶があるが、西山近辺が安定している今、今度は西山以外で噴火しないか?

A宇井 浅いところまでマグマがきているが、西山の地下全てがマグマで占められているわけではない。別なところにでる可能性はある。

A岡田 時間のスパンをどのくらい取るかで違ってくると思う。今回の噴火を1ステージとして考えるなら、次の2ステージ目は西山もしくは隣接地、西山の西の低いところが確率的に高い。
このまま終り、また新しい噴火活動が起こる場合、反対側(壮瞥側)から起こるかもしれないが、それは長い周期で考えた場合の話で、今回は当てはまらないだろう。

このまま終わるかどうかは分からない。もちろん終わってくれれば越したことは無いが、次の噴火は山頂で起こることはほとんど無いと考える。先ほど言った地点で起こる可能性が高い。その時は、火砕サージや泥流を警戒する必要がある。

レッドゾーンは小さくなったが、火口が生まれやすい地域は警戒が必要。

 

Q うちは国道230号線近くにある団地ですが、一時帰宅は可能でしょうか?

A宇井 一時帰宅には安全の確保が重要になります。火口近くは難しいと言うしかない。いけるかどうかは行政が判断することだが、今のところそれは難しいというしかないだろう。

A岡田 現状を申し上げると、噴石で100個以上屋根に穴があいていたり、泥流で埋まっている状態です。集団移転を考える方が現実的かもしれない。
復興と時期噴火の防災構想を含めて、今後議論が必要だと思う。

洞爺湖温泉の80%は灰のみ。流土堰の効果で東側は無事のようだ。今のところ洞爺湖温泉東側はさほどの被害ではない。

A宇井 実はあまり報道では触れられないことですが、隆起している場所に住んでいる建物の中には、外見は無事でも、傾斜して住むことができない建物もおおくあります。
西山の火口近くにある大きい公共の建物は、傾いていて屋根の片隅に水が溜まっています。多くの建物が、実はそういう状況に置かれているのです

A岡田 先ほどの集団移転、復興に関わる話ですが、破壊された場所では、それを逆手に取ることも可能かどうかこれも検討すべきでしょう。
噴火や溶岩流を、「火山からの贈り物」と思って次につなげるということ。
今回マグマが上がったことによって、「虻田温泉」という可能性もある。
洞爺湖温泉街も、今のままなら使えるかもしれない。が、次の噴火があることを承知の上で進めなければならない。

A宇井 日本では「現状復帰」という言葉が良く飛び交いますが、これは行政・日本の特性であると思います。
現状では国道230号線はズタズタ、公共施設の破壊もあります。
これを噴火のモニュメントとして保存していく。それを上の方から展望台で見れるというような形にするのもひとつの考え方ではないかと思います。長い目で見ると、現状復帰するだけではなく、さまざまな方向性があるということです。

 

Q 地殻変動の話があったが、これによりJRの線路や高速がずれたりしたが、今後はこのようなことがないのだろうか?

A岡田 3/31に今までの噴火で最大のエネルギーが放出された。このときの隆起は狭い個所に集中して起こっている。現在のJRの線路や国道に影響を与えているのはむしろその後の隠れた溶岩ドームの生成によるものであります。
昭和新山の時は噴火地点に近いほど変動は早く終り、協会病院あたりの方は長く続きました。こればかりはいつまで続くかは、予測の範囲外です。

A宇井 わたしなりに考えるところでは、今の使用はあくまで「仮」にすぎないと思っていますし、関係各位にはそのように申し上げております。今はあくまで「だましだまし」使うしかない。復旧とは考えないで欲しい。

以上で説明会は終了しました。

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