有珠山噴火
夢の一時帰宅実現の巻
5月15日、ついに待ちに待った一時帰宅ができるという知らせが来た!しかもそれが翌日だという。
私の通う豊浦教室は比較的安全な虻田町の先生が多く、避難している先生方の多くがこれまで何度も家に帰っていたのでその度に「いいなー、一度でも帰れたらどんなにいいか。でもうちよりもっと危険な所の人もいるしな。」というような気持ちでいた。
私の家は温泉町の中でも少し離れたところにあるので、どうしても期待が高まってしまう。でもついにその夢が叶う時が来たのだ。もうそれからは帰ることで頭がいっぱい。持って来る物のリストを作り、夜もその整理に励む。なにしろ時間は30分間。効率的に過ごさなければならない。
頭の中でシュミレーションをする。まず玄関をあけ、中に入ったら押入れに直行し、かばんを出す。そしてそれを開けて始めに入れるものはパソコンのプリンター。これがなくて一番不便していたのだ。あとは年賀状、写真、はんこ、カメラ、目覚し時計・・・。
寝袋も持てたら持とう。フルートとトランペット、これは大切だから絶対持たないと。あとは日焼け止めにシャンプー、リンス。そんなもん買えるからいいでしょ、と言われたけど。でも入ったら入れよう。
詰め替え用ボトルは貴重だ。あー、だけどそれよりもっと楽しみにしているものがあるんだ。去年、初めて庭に植えたチューリップ。色とりどりに植えたので今ごろ庭いっぱいにきれいにさいているはず。クロッカスとすいせんも植えたけどそれはもうたぶん終わってる。せめてチューリップが見たいなあ!
ああ、もうドキドキ、緊張する〜。なんて思っていた夜の9時前、教育委員会からの電話。「あすの一時帰宅が来週の日曜日に延期になったのでよろしく。」なに〜。もう力がぬけて立ち直れない。今回の一時帰宅は危険地域ということで人数がかなり制限されており、この地域の住人が予想より多かったため(住民登録していなかったりして)教員住宅は後回しとなったらしい。あーあ、あと一週間。長い。チューリップは大丈夫かなあ・・・。
5月21日。いよいよだ。
10時30分、集合場所からバスに乗り込む。バスで近くまで行ったら消防車に3人ずつ乗って現場へ向かうのだ。持ち出す荷物は安全のため「リュック一つか片手で持てる程度」と制限されている。でも周りの人はずいぶん大きなバックやスーツケースなどを持っており、かなりやる気だ。私も持てるだけ持とうと決心。
バスを降りて消防車へ。中でヘルメットとマスクを装着し、無線機を持たされ、出発。火山灰がうっすらと積もる中を進む。2ヶ月弱だが、懐かしい道のりだ。いよいよ家に近づく。道路がかなり隆起しており、道路沿いの家は外壁が剥がれ、落ちている。被害がここまでなっているとは、思っていた以上だ。
家についた。チューリップは・・・咲いていた!赤、黄色、紫・・・。葉には少し火山灰をかぶりながらもきれいにならんで、見事に美しく咲いている。感動・・・。
写真を何枚かとって、急いで家の中へ。「ただいま!」と大きな声を出してみてちょっとじ〜んとする。中はあまり被害がないといううわさもあったがやはり、物がかなり落ちている。大きな地震があったようだ。ガムテープをはって行った食器棚も、中で食器がこわれている。でもかたづけている時間などない。荷物を用意しないと。リストをチェックしながらつぎつぎに物を入れていく。
ほぼ荷作りを終えて時計を見ると20分経過。わりと余裕がある。窓を開けて庭をながめ、また何枚か写真をとる。おっと忘れちゃいけない。家の中にも小さな鉢植えがひとつ、あったのだ。お〜まだちゃんと生きているではないか。水は出ないので買い置きのペットボトルの水が役に立った。水をあげながら今度来るまで生きていろよ、と声をかける。押入れの中に、もうひとつ欲しい物があったな。でも暗くてよく見えない。
手探りで探していると・・・いたっ。そういやこれ、のこぎりだ。指先から血がぽたぽたと落ちる。こりゃひどい傷だ。最後の最後になんてこった。とりあえず荷物を運ばなきゃ。傷をタオルでぎゅーっと押さえる。小さな荷物一つどころか大きなかばんが2つにリュック、トランペットのケース。スキューバダイビングの器材から寝袋まで持っちゃった。
さすがにシャンプーはやめたけど。でも積んで安心。他の人は私以上だ。りかちゃん人形のおうちやファックス、ボールなどさまざま。消防のおじさんも「これだけの量は初めてだよー。」なんて言いながら手伝ってくれている。
みんなそれぞれの戦いを終えたという表情。私は指の傷が気になっている。と言うか「みんな気づいてー、私こんなに大変よ。」という感じ。あまり相手にしてくれないまわりの人を見てあほらしくなる。血はすぐに止まってよく見たら全然たいしたことなかった。ははは。
そんなこんなで怒涛の一時帰宅は終了。たくさん持ってきたのはいいけど避難先の親の家はせまく、わたしの寝泊りしている部屋も物がいっぱい。置くとこないよー。やっぱり仮設住宅が当たるといいな。
5月21日 廣川 純子