今野博信@室蘭

見れば見るほど・・・
(体験を乗り越えていく現実に驚かされた!)

 噴火に見舞われた虻田町の隣にある伊達市、そこに自分の両親が住まいしていることもあって、今回の災害は、けっして人ごとではありませんでした。それに加えて、当初の地震は室蘭というさらなる隣接市にも大きく影響を及ぼしていて、自宅に居ても噴火直前までの間断無い揺れに不安をかきたてられた記憶は今でも鮮明です。

 それでも、実際に避難生活を余儀なくされたみなさん方に比べられるような苦労でないことは、確かです。何かひとつでも、その労苦をねぎらったりいたわったりすることができれば、という思いでいた時に、以前から参加していたMLに佐藤理氏からの案内が流れました。それが、この有珠山ネットとの関わり(本当にささやかすぎて申し訳ないくらいの関わりですが・・・)をもった最初です。
 登録を済ませたとたんに流れ込んできたメールの数に、まず圧倒されました。大きなうねりを感じさせるに充分な迫力でした。新しい道具に、確かに人々の思いが乗っかっている感じでした。直接に誰かの安否を確認する必要がない人々でも、ご自身の思いを伝えたいというケースも多かったようです。それらに応えようとする、現地から、あるいは近隣市町村からの返答メール。そして、冨田氏をはじめとするみなさん方のホームページからの発信。みんなが切実で一所懸命でした。

 まだ、落ち着き出した、とも言えない頃に「うすこい」は既に企画されていました。(何という手際の良さと実行力!)それまでのROMから、一歩踏み出させてくれたのが、この企画でした。5月3日からの3日間、足を運ぶことになりましたが、家が近くであることから日帰りの日々でした。遠路はるばる、といった方々の多かった中、ちょっと肩身が狭かったのですが・・・。
 「巣窟」と呼ばれていた本部の偉容。大仕事でも笑顔でこなす後藤氏の余裕綽々。各地から集まってきた方々の善意と技術力。「隊長」の差配と押し出しの良さ。それ以外にもたくさんの驚きや感動がありましたが、何と言っても同じチームを組んだウォーりー永田氏ハラディ原田氏との道行きに、思い出は集約されます。

 前日の雨に影響されて(山容を視認できないと交通を規制していた)、洞爺湖の北側、洞爺村まわりで豊浦町へ出向いたり、さらには、長万部町まで足を伸ばして何ヶ所もの避難所を訪ねました。その途中で仕入れた情報(道南バスの発着など)を、永田氏はこまめにレポートしていました。モバイルの実例を間近に見て、ひそかに感動していましたが、表情に出すのはちょっと恥ずかしかったので、冷静さを装うのに苦労していた私でしたが・・・。
 ホームページやMLに反映された最新情報に、助けられた人々は、確かに大勢いたことでしょう。でも、情報機器の利用方法を身に付けていなければ、その情報に近づけないのも事実では?という疑問をもったのも、その頃でした。こうした情報格差や、受け手への思いが頭をかすめ出したのは、私にとってはとても大切な経験でした。伊達に住む私の両親が、これらの情報を手にできる可能性はなさそうに思えていたからです。

 5月5日の当日を迎える前までに、自分の勤務校(小学校)からも激励の「こいのぼりページ」をリンクしてもらっていました。コンピュータクラブの子ども達は、実に熱心に描いてくれていたので、とてもうれしい思いでいました。当日は、避難所の方たちに見てもらえるのを楽しみにして、車を走らせたものでした。
 訪問した先でのPCの使われ方は、総じてチャットゲームでした。中高生が席を占めていたので、さもありなん、です。最初は確かにがっかりもしましたが、今彼らに必要なことが、それらの楽しみなら、それも大事なことなんだよなぁ、と思えるようになったのは、彼らの喜びようがこちらにも伝わってきた頃でした。と、同時に、自分では「お手伝い」「ボランティア」などと、勢い込んでいたけれど、その思いを満足させてくれない状況があっても、それは決して不満や不充足感にとらわれるような事じゃないんだ、と思わせてくれたわけです。見るまでは、気づけなかったことです。

 実際に見れば見るほど、気づくことは増えてきました。それにつれて、気になることや疑問に思うことも増えてもきましたが、それらは不快なことではありません。自分にとってはとても得難いことでした。自分自身で納得できる解答がまとまったわけではありませんが、こうした機会をもうけてくれた有珠山ネットとそこでの出会いには、感謝の気もちがいっぱいです。

 そして8月12日の「プロジェクトBoo」。(「うすゆめ」をパスした私は、さらに肩身が狭くなってしまったのですが・・・)実際に子ども達に接したり、避難先の方々と言葉を交わすことができることを楽しみに、勇んで参加しました。と言っても、例のごとく、準備や片付けを割愛させてもらった「いいとこ取り」のお気楽な参加の仕方でしたが。(地の利がそうさせている、というよりも、いい加減な性格のせい?)
 会場では、干川氏@大妻女子大をはじめとする5月以来の面々や、新しく知遇を得た小倉氏@室蘭幼稚園などなどと、ほんとうに幅広い方々のご活躍ぶりに感服させられました。あんなこともできるんだ、とか、あんなことをしてもいいんだ、とかの「目から鱗」がたくさんでした。
 「テキ屋班」の輪投げ野菜焼きにだけ没頭していたわけではなく、きちんとお客さん方の表情にも目を配っていたつもりです。たくさんの笑顔に出会えたのは、たいへんな収穫でした。それらは、この日だけの特別なものではなく、その次の日からも、そのイベントを時に思い出してくれて、ふっと漏れ出る笑顔になっているのでは・・・と思わせてくれるものでした。

 熱々のじゃがいもホイル焼きを手渡しながら、「ありがとうございました」との言葉が自分の口をついて出てくるようになった時、本当に来て良かったなぁと思えました。実際には、ほんのちょっとの手伝いしかできませんでしたが、得たものは大きかったです。きっとこれからも、何度も思い出してもっともっと深く味わっていくことでしょう。ありがとうございました。そして、仮設住宅の皆さんをはじめとする方々には、避難生活を元気に乗り切って、さらに復興へ向けて意欲を持ち続けてもらえますようにお祈りしております。

 以上、有珠山ネットへの感謝とお礼の気持ちを込めて、卒業感想文とさせていただきます。

                                           今野博信@室蘭@1957生